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そんな銭湯を、銭湯好きの記者達が実際に取材し紹介していきます。

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地元で愛される美肌の湯。リニューアル工事開始直前!『はすぬま温泉』【大田区 / 蓮沼駅】

〒144-0051 東京都大田区西蒲田6-16-11

 

こんにちは。美月です。

大田区の『はすぬま温泉』が、リニューアル工事に入る ― 。

夏の終わりに飛び込んできたニュース、銭湯好きの皆さんのお耳にはもう入っているかもしれません。

何を隠そう、『はすぬま温泉』は私の定宿ならぬ「定銭湯」の一つ。いわゆる行きつけの銭湯です。

柔らかく肌にやさしい泉質の温泉。広くて足がのばせる温泉浴槽。源泉かけ流しの水風呂。手入れの行き届いた、使いやすい動線の脱衣所。お風呂あがりのハーブティサービス。いつも感じよく迎えてくれるスタッフの方々……

いつ行っても安心・安定のサービスで、使いやすい日常の銭湯としてよく利用しています。

リニューアルの一報を聞いて、『はすぬま温泉』が、“今風”な感じにリニューアルされちゃうの?と、ちょっとだけ不安に思ったのも事実。

あの広い浴槽は?使いやすい脱衣所は?滝のタイル絵は??変わっちゃったら寂しいなあ……

そこで今回はリニューアル前の『はすぬま温泉』にお邪魔して、お話を聞いてきました。結論から言えば、心配無用!!リニューアル後がますます楽しみになりました……!

まずはもうすぐ見納めとなる現在の『はすぬま温泉』の内部から。さっそく見てまいりましょう。

 


地元の人に愛される「美肌の湯」と、雄大な滝のタイル絵が目印!


東急池上線「蓮沼」駅から徒歩2分。「蒲田」駅から約10分。静かな住宅街の中に佇む『はすぬま温泉』。

大田区では珍しい淡い黄緑色の温泉は「美肌の湯」と言われて親しまれています。

建物はマンションタイプ。地元の方が日常的に利用する、いたって普通の銭湯です。ロビーに入ると、ペンキ絵師・丸山清人氏の富士山ペンキ絵が迎えてくれます。

こちらのペンキ絵は、リニューアル後も活かされるそう。楽しみ。

絨毯張りのロビーはどこか懐かしく、ほっとする雰囲気。テーブルには区報や大田区の銭湯情報、パンフレット等が並び、近隣に住む者にとっては嬉しい情報源になっています。

お風呂あがりにロビーでちょっとくつろいでいくのが定番スタイル。

 

浴室に入ると目に飛び込んでくるのは、背景いっぱいに描かれた滝のタイル絵です。これが『はすぬま温泉』の見所の一つ。

大きなタイル絵から流れ出てくる滝の先に温泉がある……そんなイメージで、浴室は滝の絵を使うと決めたのだそう。確かに、広い湯船に浸かって見上げれば、まるで山の中の滝つぼで温泉に入っているようです。

実際にある滝の写真や資料から絵を起こし、オリジナルで焼き上げたタイル。同じものは他にありません。

女湯浴室。滝のタイル絵が迎えてくれる。シャンプー・ボディソープは備え付け。

ちなみに、男湯と女湯の滝はまったく別の滝。どこの滝か分かったら、アイスクリームかドリンクがもらえるというのも銭湯好きの間では有名です。

ピンときたら、フロントで答え合わせをしてみましょう。

 

湯船は大きめの温泉湯船、ジェットバス、電気風呂、水風呂に分かれています。

配置はよく見る普通の銭湯っぽいのですが、なんといっても温泉の湯船が大きいのがお気に入り。混み合ってきても、ちゃんと足を伸ばしてゆったり浸かれます。

手前側に浅い部分を広くとってあり、2段階の深さが楽しめるのも素晴らしい。半身浴風に寝そべったり、深いところで肩までじっくり浸かったり。『はすぬま温泉』に来るとつい長湯してしまうのは、この湯船のせいでしょう。

ジェット、電気風呂、温泉、水風呂。広い温泉浴槽は浅い部分が大きいので、半身浴にぴったり。

 

水風呂は贅沢に、源泉かけ流し。冷たすぎず、なんともいえない「やさしい」水風呂です。しっとりした肌触りの温泉は、水風呂の方がより感じられるかも。

つめたい源泉で顔を洗えば、まるで化粧水で洗っているような肌触り。「カミソリ後のヒリヒリにはライオン蛇口から源泉を汲んで顔を洗ってみてね」と張り紙にほっこり。

水風呂も広々。ケロリン手桶が嬉しい。菖蒲のタイル絵を眺めながら水風呂に浸かるのがお気に入りでした。

 

コンパクトですが、無料のサウナもあります。壁に砂時計がセットされています……!

女湯のサウナ。タオルを敷いて使いましょう。リニューアル後はもう少し広くなるのだとか。

 

『はすぬま温泉』のお気に入りポイントの一つが、脱衣所。ぴかぴかに磨かれた木の床、畳素材の大きなベンチ、おかまドライヤーなど、銭湯らしさに嬉しくなります。見た目だけでなく、ちょっと荷物を置ける棚があったり、混み合わないロッカーの配置だったり、動線がしっかりしていて使いやすい。

いつも結構お客さんがいるのですが、混んでいても不快になることがありません。脱衣所でゆっくりしたい女性にとっては嬉しいポイントです。

女湯の脱衣所。壁の絵も可愛くて好きでした。

 

男湯の脱衣所はベンチがちょっと大きめ。

 


昔は違う名前だった?意外な歴史。


『はすぬま温泉』のご主人は、3代目。銭湯経営はおじいさんの代から始められたそう。

現在の場所で跡を継いだのは、38年前。当時はまだ黄緑色の温泉はなく、お父さんの名前を冠した「正和浴場(しょうわよくじょう)」という名前でした。

閉店時だけ見られるシャッターのペンキ絵は、ペンキ絵師・田中みずきさん作。

 

銭湯を継ぐ前は公務員として都市計画の仕事に携わっていたというご主人の専門は「土木工学」。

過去には黒湯も出ていたこの場所、深く掘ればさらにいい温泉が出る!と確信し、平成15年に新たに温泉を掘ることに。そこで出たのが現在の黄緑色の温泉です。これが効能抜群の、しっとり美肌の湯だったのでした。

同時に、今までの『正和浴場』から『はすぬま温泉』に名称を変更。銭湯自体の歴史は古いですが『はすぬま温泉』になってからは、まだ14年なんですね。

名前をひらがなにしたのは、優しい雰囲気で女性や子どもにも親しんでもらえるようにとの思いから。

 

そう、『はすぬま温泉』を一言で表すならば「やさしい」銭湯。

お湯も人も、使いやすさや細かい心遣いも。やさしさが行き届いているからこそ、地元の人に愛されているのだと思います。

ライオン蛇口から流れ出る源泉は、程よい冷たさ。敏感なお肌にもやさしい。桶に汲んで使いましょう。

 


なぜ今リニューアルするのか?


そんな地元の人々に愛されている『はすぬま温泉』。キレイだし使いやすいし、なぜ今リニューアルを?

実際、リニューアルを発表してから、常連さんに聞かれることもあるそう。
日常的に通っている人にとって「いつもの感じ」が変わってしまうことに、ちょっぴり不安を感じる人もいるのでしょう。

男湯脱衣所にあるこの絵が、浴室のタイル絵の原画。繋げて描かれていますが、左右はまったく別の滝。

 

まず一つは設備の問題。この建物で銭湯をやってきて38年。配管などの設備が傷んできていることが一つ。

そしてもう一つは、新たな銭湯のあり方に挑戦したい、という気持ちです。
大田区の観光PR特使も務めているご主人は、銭湯は観光の目玉になれると考えているそう。

特に「温泉」が身近にあるのは強みです。温泉と言えば通常、旅行などの非日常を思い浮かべるでしょう。
でも、もっと日常でも温泉を楽しめることを伝えたい、とのこと。

自分の年齢を考えると、今までの仕事の集大成という思いもある、と話してくれました。

ロビーでは、大田区の友好都市である秋田県美郷町の特産品も買えます。いぶりがっこもありました。

 


リニューアル後の『はすぬま温泉』はどうなる!?


さて、気になるリニューアル後の『はすぬま温泉』、いったいどんな感じになるのでしょうか?

なんと今回、模型や図面を見せて頂くことができました。どこにも出ていない、新生『はすぬま温泉』情報をチラ見せでご紹介します……!

ぱっと目を引くのはステンドグラス。かわいい……!

テーマは「大正浪漫」。ジブリアニメ「千と千尋の神隠し」のモデルになったとも言われる道後温泉をイメージしたそうです。

白い壁と木をふんだんに使った内装に、レトロで可愛いステンドグラスがポイントに。ガラス好き、レトロ好きとしては胸が高まります。天井にも木を使い、格天井も再現されるのだとか。うーん、楽しみ!

雰囲気はガラリと変わり、しっかり「和」を感じられる内装になりそうです。

 

ロビーには、子どもたちが喜ぶ仕掛けを考え中。鯉が泳ぐデジタルサイネージの池(!)が登場するそうです。

昔ながらの銭湯には池や庭園があり、泳ぐ魚を眺めながら夕涼みをしたもの。そんな伝統を伝えつつ、新しいかたちで楽しんでもらう試みになりそうです。

浴槽は真ん中に配置されています。浴室入口側のタイル絵もそのまま活かされる予定。

 

変わる部分もあれば、変わらない部分もあります。

『はすぬま温泉』の顔とも言える浴室の滝のタイル絵はそのまま残ります。よかった……!新しい内装にどんなふうに映えるのか、今からとても楽しみです。

しっとり美肌の湯はもちろんそのまま。すべての浴槽が温泉になり、炭酸泉も取り入れられるとか。

 

そしてもちろん、ご主人やスタッフの方々のホスピタリティは健在。あたたかいサービスで私たちを迎えてくれることは間違いありません。

男湯の浴室。滝のタイル絵はリニューアル後にも残ります。

 


これからの銭湯。銭湯の未来。


東京都浴場組合の理事長でもあるご主人。これからの銭湯のあり方についても、熱く語って下さいました。

これからの銭湯に大切なのはサービスの気持ち。
殿様商売のところもあったかつての銭湯経営ですが、変わっていかなければならないと強く感じているそう。

銭湯文化が生き残っていくためには、初めて来る若い人や外国からの観光客の方にも、安心して楽しんでもらわなくてはなりません。

そのためには、銭湯側がサービス業という意識を強く持たなければならないと話してくれました。(昔世代のお父様とは、接客態度についてよくケンカもしたのだとか)

ロビーには有名人のサインがずらり。

確かに、数ある銭湯の中には通でなければ行きづらい銭湯や、接客が物足りない銭湯もありますよね。

そういう意味で、『はすぬま温泉』で嫌な思いをしたことは一度もありません。リニューアルしてますます、初めての人も安心して連れてこられる銭湯になることでしょう。

 

また、各家庭にお風呂があるのが当たり前の今、銭湯は生活に絶対必要な施設でないのも事実。

それぞれの銭湯が知恵を出し、独自の個性ある銭湯がたくさん出てきて、お客様が気分や好みによって銭湯を選べるようになるのが理想だと考えています。

『はすぬま温泉』は、子どもからお年寄りまで、皆が来られる銭湯にしたいと語ってくれました。

湯あがりに嬉しいハーブティサービス。かつてハーブ湯をやっていたときに始めたアイデアなのだそう。

 


パワーアップする『はすぬま温泉』に注目です!


黒湯が出ていたのに更に掘削して新しい温泉を掘り当てたり、銭湯の看板ともいえる名前をあっさり変えてしまったり。なかなかアグレッシブなお話がたくさん聞けました。

『はすぬま温泉』からは、変化を恐れず、時代に合わせて進化していこうという力強さを感じます。リニューアルもきっとその一つ。アップデートしてこれからの世代に銭湯を残していく挑戦なのでしょう。

新しい『はすぬま温泉』が見られるのを、いちファンとして本当に楽しみにしています!

地域の人たちのために、災害時の備蓄を備えています。大田区銭湯の取り組みの一つ。ここに来ればいつも安心。

 

◆今後の予定◆

2017年9月18日~12月15日まで、リニューアル工事のため休業となります。

現在の『はすぬま温泉』は9月17日で見納め!まだ行ってない人は今のうちに是非!

12月16日のオープン前には、見学会を予定しているそうです。

また、工事中もSNSなどで積極的に情報発信していくとのこと。新しい内装が気になる方は、Twitterをチェックしましょう!

 

『はすぬま温泉』Twitterアカウント @hasunumaonsen

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美月

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