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銭湯、お風呂に関する執筆コラムを掲載。

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大阪銭湯支援クラウドファンディング、支援先が決定!〜台風21号襲来から半年、被災銭湯の今〜

台風21号によって被害を受けた大阪の銭湯を支援するクラウドファンディングをはじめてから、一ヶ月半が経ちました。
まずはプロジェクトの肝となる「支援先」の銭湯が大阪府・高槻市にある『ひかり温泉』に決まりましたので、みなさまにお知らせいたします。

台風21号の被害を受けた大阪の銭湯を支援しよう。【大阪府公衆浴場組合×東京銭湯 – TOKYO SENTO – 】

プロジェクトの立ち上げ当初からいくつかの被災銭湯に出向き、それぞれのお話を伺ってきました。
大小に関わらず被害を受けた大阪の銭湯は300軒以上。被害状況や休業理由、現状どんなことに困っているかは銭湯によってさまざまです。

この記事では、台風被害に遭われてから半年のタイミングで再度取材をして見えてきた状況とそれぞれの想い、また、改めて「クラウドファンディング」立ち上げに至った経緯をお伝えしたいと思います。

 

大阪銭湯支援クラウドファンディングの立ち上げに至るまで

クラウドファンディングを立ち上げるきっかけになったのは、「東京銭湯 – TOKYO SENTO -」に協力してくれているメンバーの発案によるものです。

「東京銭湯 – TOKYO SENTO -」を立ち上げてからの4年間、銭湯のためになにか助力できることはないかと、東京を中心に活動を続けてきました。最近ではメディアや銭湯の運営だけでなく、人手の足りない銭湯への「番頭派遣」も行うようになり、銭湯が面白くて楽しい場であることを世間に発信するだけでなく、直接銭湯を手助けできる方法も考えています。
そうした活動の裏には、協力してくれるたくさんのメンバーの存在があります。皆、本業とする仕事がありながらも「銭湯が好きで、銭湯のためになにかしたい」という想いから、我々の活動に協力してくれているのです。

東京の銭湯は数自体でいえば変わらず減少傾向にあるものの、銭湯に対して熱い想いを持っている人がいることも、銭湯という場を活用したさまざまなPRイベントがここ数年で増えているなど、若い世代を中心とした新たな盛り上がりを見せているのも、事実です。

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こういった盛り上がりを東京以外の地域にも広めることはできないかと考えていた矢先に、昨年9月に発生した台風21号が日本列島を襲いました。台風21号は、大阪をはじめ京都や神戸などの関西地域、さらには北海道でも猛威をふるい地域の銭湯は大小さまざまな被害を受けたのです。

台風が去り、詳細な被害状況がわかりはじめたのは10月に入ってからのこと。新聞やテレビなどの各メディアが続々と台風被害に関するニュースを発信しはじめたことで、大阪の被災銭湯が置かれている状況に気づくことができました。被害規模も大きく、多くのニュース記事でも取り上げられた大阪・東大阪市『長瀬温泉』の被害写真に大きな衝撃を受けたことが忘れられません。

こうした状況に心を痛めていたメンバーの一人が「被災した大阪の銭湯のためになにかできないか」と発案してくれたことが、現在行っているクラウドファンディングを通した支援をはじめるきっかけとなったのです。

被災した銭湯に対して僕たちにできることはなにか――。

メンバーと話し合う中で、こうしたケースでは修繕費などの金銭的負担だけでなく、精神的なダメージから廃業に至ることもあるということを知り、クラウドファンディングを立ち上げることを決めました。
クラウドファンディングであれば、金銭的支援だけでなく、プロジェクトを支援してくれた人の声や想いも一緒に届けることができます。さらに全国へ向けて発信できるため、普段銭湯へ行かない人にも知ってもらうことができ、共感を得えられれば支援いただける可能性が広がります。こうした従来の募金にはない部分に可能性を感じ、クラウドファンディングに掛けることにしました。

並行して行っている「ステッカー販売による寄付」も、買ってくれた人だけでなくそのステッカーをどこかしらで目にした人にも「自分ができる支援の形」を考えるきっかけを与えられるかもしれない、という考えがあってのことです。

全国の人からの「被災した銭湯を支援したい!」という気持ちを見えるカタチにし、大阪の被災銭湯にしっかり届けるため、クラウドファンディングによる支援プロジェクトをスタートしました。

 

大阪浴場組合との取り組み

大阪浴場組合と共同でのプロジェクト立ち上げに至った経緯としては、まず11月に東京銭湯から大阪府浴場組合(以下、大浴)に連絡を取り支援の提案をさせていただきました。翌12月に大浴本部に承認され、共同で各銭湯の被害状況の調査を進めてまいりました。そうして、被害の風化の懸念と、被災銭湯が廃業を決めてしまう前に行動を起こしたいとの想いから、今年1月28日のクラウドファンディングスタートに至ります。

去年から行っていた大浴による調査と、昨年末から3月まで「東京銭湯 – TOKYO SENTO -」が実施した現地調査の結果をもとに精査の上で、今回は高槻市にある『ひかり温泉』を支援先とすることとなりました。

 

本気で廃業を考えていた『ひかり温泉』。支援プロジェクトの話を聞き、再開を決意

大阪府高槻市にある『ひかり温泉』。今回のクラウドファンディングで集まった支援金の送り先に決まった銭湯です。
店主の宮田さんは石川県の出身。大阪で銭湯を経営する人には、石川県出身の人が多いとのこと。以前は東京・大田区、品川区の銭湯でも働いていたそうですが、昭和57年に『ひかり温泉』を買い取って以来、40年近くこの地で銭湯をやってきました。

 

『ひかり温泉』は台風21号が襲来する以前にも、2018年6月に発生した大阪北部地震によって被災し、休業状態にありました。
屋根瓦が落ち、浴場内のタイルや外壁のブロックにもヒビが入った状態の『ひかり温泉』を、立て続けに台風20号と21号二つの台風が襲ったことにより、ヒビ割れなどの被害はさらに広がったのです。

大阪北部地震で被災した時、すでに「廃業」の二文字が宮田さんの頭には浮かんでいたと言います。そんな状況に追い打ちをかけるように台風被害が重なり、「再建はもう無理だ」と思っていたとのこと。
そのため、風呂桶やロッカーキー、ドライヤーのコインタイマーなど、ほかの銭湯で再利用できそうなものはすべて譲ってしまい、隣接する駐車場スペースもほかの業者に貸し渡していました。

秋口には相当つらい状況だった宮田さんは、すでに解体業者にも見積もりを頼んでいましたが、大阪の解体業者は震災の影響でどこも忙しく、費用も高騰している状態。見積もりの解体費用は1500万円、さらに解体できるのも1年以上先ということがわかり、宮田さんはさらに苦悩することとなります。

そんな折にクラウドファンディングによる支援の話を聞き、宮田さんは工務店に「修繕して再建する場合」の見積もりを依頼しました。あがってきた見積もりは概算で1500万円。「解体費用と再建費用が同じなら再建をしよう」と考えた宮田さんは、「再開するなら手伝うよ」という娘さんの後押しもあり、営業再開を決断しました。

 

再開決定後は、工務店の協力もあり急ピッチで再建に向かっています。

『ひかり温泉』の被害は地震と台風両方によるもの。大阪では、ほかにもこういった状況にある銭湯は多いようです。
すでに最低限必要な部分の改修は済んでおり、温水器やエアコン設備、地震で断線したと思われる電気風呂の改修などに200万円ほど、工事に必要な資材や人件費も含め、おおよそ500万円の費用がかかっているとのこと。
それ以外には、浴場内のタイルや外壁のブロック部分の補強工事を施せれば、現状必要な工事は終わる予定です。

ロッカーキーの取り付けなど自分でできる作業は自分で行い、一度は手放してしまった風呂桶もすでに大浴を通じて購入済み。新しく近くの空き地を借りて駐車場を確保するなど、その準備は着々と進んでいます。

 

半年の休業を経て、早ければ3月22日(金)にも再開の見通しとなっている『ひかり温泉』。
『ひかり温泉』はまずは自己資金で再開を果たします。
ただ、実際に営業を再開してみないことには、ほかにも修繕が必要な箇所が出てくるかもわからないような状態です。
銭湯のなかには100年近くの歴史があるものが多く、そういった銭湯では不具合がでるたびに設備を補修し、継ぎ足しを繰り返しているため絶妙なバランスを保って稼働しています。半年稼働していなかったとなると、どこに不具合が出てもおかしくないのです。
営業再開後、さらなる修繕が必要になってくるかもしれません。

 


宮田さんが補修していた水タンクの柱

すこし話は逸れますが、去年番頭さんの急逝により休業していた銭湯に東京銭湯から番頭を派遣し、営業を再開したことがあります。
休業していたのは1ヶ月程度だったにも関わらず、水タンクやろ過器の不具合が発生し、それらの修理には2ヶ月を要しました。休業期間の倍以上の時間をかけてようやく再開を果たしたのです。

このように、自然災害による煙突の倒壊などがなくとも、一度休業をして設備を動かさない状態がつづくと、さまざまな不備が出てきます。
今回の支援金は、まずは自己資金で改修した費用を補填しながら、補強工事に費用の捻出できればと考えております。
そしてまだこれから出てくるであろう改修費用のため、引き続き支援金を集めることにより費用面での心労を軽減し、精神的なケアにもつながればと思います。

『ひかり温泉』が再開した後も、まだトラブルがあるかもしれない。それでも浴場の清掃には一切手を抜かず、キレイさを保つ姿には営業再開への意気込みを感じました。

災害による大阪の銭湯の廃業を止めたいとの想いで始めた今回のクラウドファンディングですが、支援を始めたこと自体が再開を考えるきっかけになり、さらには支援者の皆さまのおかげで金銭的な支援にもつなげることができました。
こうして実際に再建にまでたどりつけたことは、もしかすると「『ひかり温泉』が廃業する」という未来を変えた一つの要素になるかもしれません。

人が考え、気持ちを行動に移せばきっと何かが変わる。それは災害支援という難しいテーマの中で、『ひかり温泉』から学ばさせていただいたことです。

 

自己資金も底をつき解体すらままならない。廃業しても終わらない『長瀬温泉』の苦難

今回のクラウドファンディング立ち上げのきっかけになった銭湯であり、ポスターなどのデザインでも写真を使わせていただいているのが東大阪市にある『長瀬温泉』です。

台風21号の強風に煽られた煙突が浴場のうえに向かって倒れ、天井もろとも倒壊してしまいました。
銭湯の象徴ともいえる煙突ですが、一方で、煙突があることによる自然災害時のリスクも同時にはらんでいることを実感した出来事です。

昔から家業として銭湯を続けてきた『長瀬温泉』は、浴場と住居が一体となっています。浴場の屋根の崩壊は、そのまま居宅への被害にもつながりました。

今回は店主である町口さん案内のもと、ご自宅の被害部分にお邪魔させていただきました。

お家の中から階段を登って2階にあがると、そこにはもともと寝室として使っていたという部屋がありました。しかし煙突の倒壊により天井が落ちてしまった空間は、半分「外」のようになっています。
木片があちこちに散乱したまま、補修できない部分にはブルーシートがかけられていました。

解体しようにも自己資金がなく、すこしずつご自身で解体作業を進めているのです。また解体作業は近隣の住宅に危険が及ばないよう、慎重に進める必要があります。解体と同時に住居部分の補修も行っているため、すべてを元どおりにするには多くの時間が必要なのだと教えてくださいました。

 

根元から折れた煙突は、今も半分が残った状態。その先端は住居の2階に到達するほどでした。
被災前からも煙突は悩みのタネだったようで、たまに小さなコンクリートの破片が落ちてくることもあったようです。

 

さまざまな事情で公的援助も身内からの支援も期待できないため、現在は生活保護制度の検討を促されているのだと言います。そうしたご苦労が重なったこともあり、もし今後金銭的に大きな援助があったとしても銭湯を再開するつもりはないと、町口さんは話します。

 


真新しい木材は、町口さんが調達してきたもの

この半年間、完全に塞ぎ切れていない隙間や穴からは容赦なく雨風が吹き込んできました。それにより躯体(くたい)にも影響が出始めています。

 

資材確保のため働きに出ることも考えていると話してくれた一方で、「長年銭湯だけをやってきて、しかも70歳を超える歳で新しい働き口なんて果たしてあるのだろうか」。そんな不安も、ふいに口をついて出るのです。

当初は年を越すまでに終えたかった修復作業は、資金的な問題も相まって終わらせることができないまま、すでに今年も3月が終わろうとしています。

春を越せばすぐに夏が来る。また台風が来る季節までに、まずは居宅部分の穴を塞ぐ作業が急がれます。

 

再建するしか道はない。しかし課題が山積みの『弁天湯』

生野区の『弁天湯』は、大浴の2次調査で支援を必要としていることが判明した銭湯です。
1次調査の段階では、その被害の大きさから再建は無理ではないかと聞いていたのですが、急きょお会いしに行くことに。

外観からは被害状況がわかりにくいのですが、内部を拝見させてもらい、ようやく被害の大きさを知ることができました。

出迎えてくれたのは店主の大和さん。現在61歳で『弁天湯』の二代目です。
幼少の頃にお父さんを亡くされ、それ以来86歳になるお母さまと一緒に、この銭湯を守ってきました。

 

「土足で上がっていい」とのことで、すこしの罪悪感と共に靴を履いたまま浴場へ入らせてもらうと、そこには大きく波打つ屋根がありました。
こちらも煙突の倒壊が原因だそうで、黒くみえる骨組みの部分がなんとか支えてくれたため、かろうじて天井の崩落は防げたのだとか。

その後2階も案内していただき、倒壊したままになっている煙突も見せてもらいました。

 

乗っても大丈夫な部分を教えてもらいながら屋根に登ると、屋根を突き破る煙突が目に飛び込んできました。
大阪特有の「湯気抜き」と呼ばれるやぐら部分は、台風の強風で屋根が吹き飛んでいます。

大和さん曰く「地震の時は被害もなく耐えられたので、まさか台風の風で煙突が倒れるとは思わなかった」とのこと。

水漏れの応急処置を施しましたが、工務店はどこもほかの被災現場に忙しくて対応が難しく、別で銭湯を経営している親戚からも廃業を勧められたといいます。被災直後はショックで落ち込み、廃業するしかないと考えていたようです。

 

不動産屋の勧めで廃業してマンションや駐車場への転用なども考えたようですが、土地区分の事情でその道は断たれたため、「再建以外の道はない」との判断に至りました。
現在は再建へ向けて頑張っている中で、すこしでも支援を受けられないかと連絡をいただきました。

工務店や煙突業者からの見積もりでは、再建に必要な費用は数千万円に及びます。
保険は適用されるのである程度は保険金で賄えるものの、それ以外は融資で工面をしなくてはならないのが現状です。

たとえ再建できたとしても、課題は山積みです。最近お母さまが病床に伏してしまったこともあり、再建後の運営は一人で行わなければいけません。
決して無理ではないですが体力的には大きな負担がかかるうえ、今までのようにお客さんが戻ってくるまでは収益的にも大変な日々が続くのです。

 

大変な状況が続くなかにありながらも、あれこれ話してくださる姿は僕らが想像していたよりもずっと明るい様子でした。

 

ただ、現状まだ再建への見通しが立っていないため、今回のクラウドファンディングで『弁天湯』に支援をすることはできない状況です。
現在も電話でやりとりをしながら進捗を見守っていますが、今後再建の道筋が立ち、支援を必要とするなら、僕としては今後も何か手伝えればと考えています。

『弁天湯』店主・大和さんから伝えたいこと

店主の大和さんから、今回記事を通してほか同業者に伝えてほしいと言われたことがあるので、ここで紹介させていただきます。

「融資を受けるために、営業責任者である母から自分に名義を移し、融資を受けやすくしようと考えていました。しかし、保健所に現状を見られたら恐らく今は営業許可書の書き換えは難しいだろうと思います。災害が起こり、こういう状況になってからでは遅い。もし代替わりを考えている銭湯があるのであれば、早めに権利関係や登録者は次代の者に変えたほうが良いです。今回の経験で、それも銭湯での防災対策の一つだと感じました」

銭湯はどこも60〜80代の方が現役で働いており、高齢になっても続けられない仕事ではありません。
しかし、社会的な審査が入るような場では86歳という年齢で店舗責任者を続けている状況では、なかなか融資を受けることが難しいのです。

さまざまなものを一瞬で奪い、日々の備えがなければ乗り越えられない自然災害。
この大和さんの状況は決して対岸の火事ではありません。

 

被災後は僕らには計り知れないほどの心労があったことと思います。それでも、この状況や経験を人に話す、人に苦労をわかってもらえるだけでも、多少なりともそれまでのストレスは軽減されるのかもしれないと感じました。

「再開できたら『弁天湯』をどうしていきたいですか?」との質問には、「銭湯は地域のコミュニケーションの場。老人のひきこもり対策など、人々の憩いの場としてやっていければ」と話してくれました。

 

営業を再開した被災銭湯も、苦難は続く

今回の記事で紹介させてもらった銭湯は、それぞれ状況が異なる銭湯を紹介させていただきました。

地震と台風により一度は廃業を決めたものの、もう一度再開することを決めた銭湯『ひかり温泉』。
台風による煙突倒壊が被害をさらに拡大し、廃業を決めた後もなお大変な状態が続く『長瀬温泉』。
『長瀬温泉』と同じような被害状況にも関わらず、もう再建しか道はないと前に進もうとしている『弁天湯』。

それぞれ大変な状況ではありますが、被害が比較的軽かったためにすでに営業を再開した銭湯もあり、一言で被災銭湯といってもその状況はさまざまです。

 

営業再開はしたものの、今も修理を待っている銭湯はたくさんあり、強風で飛んだ「湯気抜き」の屋根などをビニールシートで覆った状態で営業している銭湯も少なくないです。
今はビニールシートで覆い、大きな問題は発生していませんが、それでも雨風の侵食を受けた木材はどんどん劣化していきます。
この状態が続けば躯体にまで被害が及び、修繕箇所はさらに広がっていくと予想されます。

銭湯業界では専門の工務店が少なく、さらに地方となると業者はより限られます。見積もりはだしてもらったものの修理はまだ数ヶ月、1年以上先のスケジュールとなっているところも多いのです。

とある店主さんは「自己資金があり費用的な支援を必要としなくても、業者の少なさから完全な再建ができていない銭湯もある。資金的な援助よりも、修理してくれる業者がすぐ来てくれたり、余っている瓦など資材での援助だったりもありがたいこと」と話していました。

設備の特殊性から専門の工務店としかやりとりをしないことが多い銭湯ですが、災害においてはそうもいっていられない状況です。

 

支援時のメディアのあり方と取材を受ける被災銭湯の気持ち


ヒビの入った『ひかり温泉』の外壁。塗装を一度剥がし、そこから補強の工事をする予定
多くの支援を募るためには多くのメディアに取り上げてもらうことも、支援の輪を広げるために必要なことです。

本来であれば取材してもらうことはありがたいことなのですが、被災銭湯側からすると取材に不慣れなうえ心労が重なる状態での対応というのは、ありがたい反面、新たなストレスがかかることもあります。

とある銭湯の店主は、「被災直後のどうしようもない状況の中、空撮用のヘリが上空を飛び交い、被害箇所を撮影したカメラマンの『良い絵が撮れた』という心ない一言にひどく傷ついた」と教えてくださいました。

もちろんそのカメラマンも「(この被害状況をみんなに知ってもらうために必要な)良い絵が撮れた」という意味での発言だとは思いますが、それでも取材する側の態度一つでショックを受ける場合もあります。

今回の活動を取り上げてくださるメディアの皆さま、そしてすでに支援をしていただいた支援者の皆さま、そして何より支援を必要としている被災銭湯にとってより良いカタチの支援となることを、僕らや大阪府浴場組合は望んでいます。


支援していただいた皆さまから応援メッセージです。クラウドファンディングのプロジェクトページから見ることができます
支援をすること自体もとても大変ですが、支援を受ける側の被災銭湯の皆さまはもっと大変なのです。
それゆえに支援が受けやすい状況を作るために、明るい支援にしていくことも大事だなと思いました。

そして、『長瀬温泉』や『弁天湯』やほかの被災銭湯でも、被害が大規模になる要因は煙突の倒壊が大きいと感じました。
銭湯の象徴である煙突ですが、災害への対策として古い煙突は新しい煙突に変える、補強をしておく、燃料をガスに切り替えて煙突は切ってしまうなどの対策も考えていく必要があると思います。

どれも費用が大きく、ガス化はランニングコストが増えるので考えものですが、それでも廃業のリスクや再建費用のリスクを考えると必要な措置ともいえるでしょう。

 

さまざまな支援のカタチ

今回はクラウドファンディングを使った資金的な援助が主です。
金銭的支援を必要としている銭湯もあれば、違うカタチでの支援を求める銭湯もあります。

僕らは東京を拠点にし、東京に住んでいるため頻繁に大阪に出向くのは難しいこともあります。
もし、この記事を読んでいただき「何か出来ることはないか」と思ってくれる大阪の方や、近くの都市の方がいてくれるのであれば、それぞれの支援のカタチを考えてもらえると嬉しく思います。

現在「東京銭湯 – TOKYO SENTO -」で行なっているクラウドファンディングや有志銭湯で販売しているステッカーの購入だけではなく、再開を果たされる『ひかり温泉』にはぜひ入浴しに行ってほしいし、早くに修理ができそうな工務店があれば銭湯の専門でなくても相談に乗ってあげてほしいと思います。

そして今回の被災は大阪だけでも、そもそも銭湯に限った話でもありません。大阪府内を車や電車で移動していると、未だにビニールシートを被った家が目に入ります。

銭湯は斜陽産業かもしれません。必要とされなくなれば銭湯はなくなり、そうして淘汰されていく原理は理解できます。
しかし、今回のような突発的な自然災害の前では、運営が順調であってもやる気があっても、一瞬にして生活が奪わてしまうのです。意図せず廃業に追い込まれてしまうこともあり、そんな中でも必死に再建を目指す銭湯があるのであれば、報われてほしいし支援をするべきだと考えています。

自然災害の多い日本では、どの都市でも同じことが起こりえます。
うちの『喜楽湯』も煙突があるので倒壊のリスクはありますし、東京全体が被害にあえば必ず工務店不足が起こると考えています。

だからこそ困っている銭湯があれば支援をしたい。そしてその支援のカタチはさまざまあって良いと思います。
「東京銭湯 – TOKYO SENTO -」は、今後もできる範囲で支援を続けていくつもりです。

被災から半年のタイミングで、たくさんの被災銭湯を取材させていただきました。
普段は取材などを受けておらず、またメディア露出を躊躇するような状況にも関わらず今回ご協力いただいた被災銭湯のみなさまには心よりお礼を申し上げます。

そして、この記事を最後まで読んでいただいた皆さまも、ありがとうございます。
まずは被災銭湯の現状を知ってもらい、何かを感じ取ってもらえると嬉しいです。

 

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台風21号の被害を受けた大阪の銭湯を支援しよう。【大阪府公衆浴場組合×東京銭湯】

AUTHOR

日野 祥太郎

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