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銭湯、お風呂に関する執筆コラムを掲載。

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フランスからの留学生 ロマン・シモンさんインタビュー「無くして欲しくない、日本のカルチャー“SENTO”」

ロマン・シモン(Romain Simon)さんは、フランス出身の23歳。
現在はフランスのグルノーブル大学を休学して、東京外国語大学で語学(翻訳の修士課程)の勉強をされています。
 
今回は、日本で銭湯に出会い、銭湯の魅力に惹かれていったシモンさんにインタビューを行いました。
 
シモンさん

(インタビュアー「東京銭湯 – TOKYO SENTO -」 後藤)

 

銭湯との出会い〜きっかけは雪国、新潟の銭湯

 

2017年9月から東京の大学へ留学しているシモンさんは、2年前にも新潟に1年間ほど日本語の勉強をするために留学していたそうです。

日本や日本語に興味を持ったのは、高校生の頃。日本の古い映画(黒澤明監督や溝口健二監督の作品や時代劇など)を好きで良く観ていたり、日本に1週間ほどホームステイしたりしたのがきっかけなのだと言います。今回はそんなシモンさんに、「銭湯を好きになるまで」を聞いてみました。

 

シモンさん

 

――銭湯を好きになったきっかけを教えてください

シモンさん 「留学中の新潟で初めて銭湯に入ったとき、広い湯船をとても気に入りました。裸になることは少しだけ戸惑いもありましたが、すぐに慣れましたね。銭湯の中で街や近所の人たちとよく会話をしていて、そういったコミニュケーションがとても興味深い思い出となりました。新潟は雪の降る寒い地域なので、銭湯に入ることで冷えた体を温めていました。

東京外国語大学では日本語・日本文化研究留学生というプラグラムに参加しているので、銭湯や温泉が大好きな私は、論文のテーマとして銭湯について研究しています」

 

「銭湯への素朴な疑問や感想」

 

(「東京銭湯 – TOKYO SENTO -」主催のイベント 第2回「OFF呂(オフロ)会」にも参加してもらったシモンさん……)

 

――銭湯への疑問や、感想などありますか?

シモンさん 「素朴な疑問としては、なぜ入浴料が一律なのかという点です。
東京の銭湯はどこも460円で同じ値段というのは不思議に思いましたね。

銭湯のお風呂に入るのは気持ち良くて好きですが、熱い湯には長く入っていられません。
日本の夏は湿度が高く入浴後に汗もかくので、正直銭湯のお湯にはあまり浸かりたくはないのですが(笑)、サウナと水風呂に入るのは大好きです。
フランスでは夏に涼むためにプールに入る習慣があるので、日本でも夏には水風呂だけ入りたいですね(笑)。水風呂をメインにした夏のイベントがあるとおもしろいかもしれません。
 
フランスにも昔は公衆浴場のようなものはありましたが、シャワーのみでした。現在は温浴効果による治療を目的として入る、温泉のような施設があります。ここはみんな水着を着て入浴します。
 
――日本の銭湯とは似ているようで、ちょっと違うようですね。

シモンさん 「そうですね。どちらかというと私は銭湯で自分から他の人に話かけるタイプではないのですが、新潟の銭湯ではとてもよく声を掛けられました。旅行の時も京都など地方の銭湯へ行くとよく声を掛けてもらいましたが、東京の銭湯では遠慮をされているのか、声を掛けてくれる人が少ない気がして、銭湯での会話が無いのはすこし寂しいですね」

 

「好きな銭湯」を3つあげるとしたら……?

 

シモンさん

 

――シモンさんが好きな銭湯を3つあげるとしたらどこですか?

シモンさん 「今は西東京市に住んでいますが、以前は大学の寮にいました。その時によく通っていたのは『藤の湯』という多摩駅の近くにある雰囲気の良い小さな銭湯です。スポーツをした後などに週1回くらいのペースで通っていたのですが、やはり『生活圏の近くにある銭湯』というのは大きなポイントになりますね。

ひばりヶ丘駅の『みどり湯』は露天風呂がお気に入りです。雪の降る時期に入ると、温まるだけでなくとても風情があってよかったです。お風呂の種類もたくさんあり、サウナもよかったです。

最後は、あまり知られていない銭湯かもしれませんが、田無駅にある『庚申湯』です。唐破風(からはふ)の屋根が特徴的で、とてもキレイところがお気に入りです。
日によって男湯と女湯が入れ替わるので、露天風呂はタイミングによって入れないこともあります。入れない時はとても残念でした……。
今は2週間に1度くらいのペースで銭湯へ行っていますね」

 

無くして欲しくない、日本のカルチャー“SENTO”

 

 

――銭湯への想いや、これからの銭湯に期待することなどあれば聞かせてください

シモンさん 「私は寿司やとんかつ、お好み焼きなどの日本の食べ物も、温泉も銭湯も大好きです。これらは日本の“古き良き“大切なカルチャーだと思います。

以前、金沢旅行で民泊に泊まった時、オーナーさんが銭湯の入浴券をくれたんです。せっかくなので近くの銭湯へ行ったところ、その銭湯の店主が90歳くらいのご高齢の方で、とてもびっくりした思い出があります。入浴券をもらうと銭湯へ行きたくなりますし、初めて銭湯へ行く人でも心のハードルが下がりますよね。

訪日観光客も増えていると思うので、宿泊施設と提携するなどして、海外からの観光客に入浴券を渡すのも一つの手なんじゃないかと思いました。観光施設の一つとして日本の銭湯を体験してもらうといった取り組みがもっとあってもいいのかな、と。

――銭湯は日本の誇るべき文化であり、観光資源だということですね。

シモンさん 「はい。一方で、一般の観光客にはまだまだ銭湯は知られていません。銭湯の魅力は『広い湯船に入り、リラックスできること』だと思いますが、この銭湯という文化は日本独自のものなので、もっとたくさんの人に体験してもらうべきだと思っています。

だからこそ、銭湯が減っている事実はとても残念ですね。
銭湯の建物を登録有形文化財に登録するなどして、もっと保存していってほしいとも思います。

やる気のある若い人に銭湯経営を任せる仕組みももっと活発になるといいかもしれませんね。
あとは……、料金」

――料金、ですか?

シモンさん 「現状では難しいと思うのですが、日常的に入浴するには460円は高いという人もいます。そういう人のために、たとえば月曜は半額にしてみるなど、料金面でも銭湯へ行きやすくなる取り組みもあればと思います。

銭湯という素晴らしい文化が無くならないよう、多方面からのアプローチを頑張ってほしいです」

 


大変興味深いお話でした。シモンさん、ありがとうございました!
日本語の勉強をされているだけあって、インタビュー中はすべて日本語で対応してくれたシモンさん。とてもお上手で、取材もスムーズに進みました。フランスからの留学生ならではの素朴な疑問や質問など、私たちが気がつかない視点での貴重な意見を聞くこともできました。

また、3つ選んでもらった好きな銭湯は、公衆浴場ならではの生活圏の「近くにある銭湯」というのがポイントになったようです。
日本の大切なカルチャーとしての“SENTO”を、無くしてほしくないという思いが言葉の端々から伝わってくるインタビューとなりました。

シモンさん、ありがとうございました! これからのご活躍を期待しております!

(※取材時の情報になります)

AUTHOR

n.yusuke。

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インタビューフランス人ロマン・シモン留学生
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