こんにちは。
お初の登場、銭湯好きライターのkamiura mikuです。
本日は、神奈川県小田原市内に唯一残る、昭和レトロな銭湯『中嶋湯』をご紹介します♨
「中嶋湯」は、創業83年。店主の加藤寛さんが生まれた年に誕生しました。
今ではめったに見かけなくなった、入口から男女別の引き戸をガラガラと開けて中へ入ると、なんと小さな番台が現役で活躍しています。
番台に座るのは、ハッピ姿がお似合いの加藤ハル子さん、82歳。
店主の寛さん83歳のお嫁として嫁いで以来、ずっと銭湯を見守ってきました。
昭和のまま、時が止まったような建物とハル子さんの人柄で、湯上りは体も心もポカポカに。
どうぞ、ごゆるりと中嶋湯ルポを楽しんでください♨
入口から男女別、現役の番台が残る、昭和レトロな銭湯
場所は、小田原駅から歩いて10分ちょっと。
ザ・昭和☆で味わいのある佇まいです。
オープンは15時半ですが、30分ほど前からお客さんたちが一番風呂を求めて集まりはじめ、いつも少し早めに開くのがお決まりです。
のれんをくぐると、昔ながらの男女別々の入口が現れます。
男湯の入口の引き戸を開けると、ダイレクトに浴室まで見えます(笑)。
女子は小さな仕切りがありますが、ドキドキしますねえ。
番台に座って約60年。女将のハル子さんのあったかい人柄に惚れる♪
中へ入ると、優しい人柄がにじみ出るハル子さんが番台で出迎え。とても82歳とは思えないほど、テキパキとしていて、おしゃべりがとってもお上手です。
現役の番台は、ありそうでなかなかないので、「おお〜!」と興奮。
ハル子さんは、24歳の時に2代目店主の寛さんのもとへお嫁にやってきて以来、約60年も番台に座って、お風呂を見守ってきました。
「お客さんにね、言うことはいつも一緒なんだけど、なんかあったらお湯に流してねってね。大きなお風呂に入ったら、体が軽くなって、悩みもふっとんじゃうんだから。みなさんね、ちょっと行けば箱根湯本のいいお風呂があるのに、ここでいい、ここでいいって、来てくれるのよね」
素敵なお話で、しびれます。
一度、ハル子さんに出会ったら『中嶋湯』の大ファンになること間違いなしなのです♨
それでは、中へ。
男湯の脱衣場はこんな感じです。浴室と同じか、ひょっとしたらちょっと広いかもです。
女湯の脱衣場は半分ぐらいのサイズです。昔から男性客が多いそう。
「ボトルキープじゃなくて、“桶キープ”ね。いつの間にか、常連のお客さんが置いていくようになったのよ。桶の置き方にも、お客さんの個性が出るわねえ」とハル子さん。
男湯の方には、日本で唯一の女性ペンキ絵師・田中みずきさんによる淡い色合いの富士山がお目見え。もくもくと湯気が立ち込める浴場によく映えますネ!
ちなみに、女湯は空想の世界の山々の景色が描かれています。
湯船の中で想像力が掻き立てられる風景は、メルヘンな雰囲気もあってとても素敵です。
湯船は超シンプルで、男湯も女湯も2つのみ。昔ながらの浅い湯船と深い湯船です。お湯は、地下水から汲み上げ、83歳の寛さんと息子さんが薪で温めています。
薪は市内の材木店や『中嶋湯』ファンの二宮町の材木店の社長さんから廃材を譲り受けているそうですよ。人と人とのおつきあいが大切なのですね。
お湯の温度は、42度とちょうど良いあんばい。
浅い方のお風呂はブクブクしています。
忘れ物は、お金でも、腕時計でも、なんでも番台に届く
ハル子さんが、こんなエピソードも教えてくださいました。
「前にね、ロッカーに3万円をそのまま置いて、忘れちゃった人がいてね、次に来たお客さんが見つけたの。どうしようか2、3分心が揺れたみたい。でも、正直に言おうと、私のところまで持って来てくれたの」
お金を発見したお客さんとハル子さんが話していると、ちょうどそこへお金の持ち主が! みんなで「よかった、よかった」と喜んでいると、持ち主のお客さんが感謝の印に、近くのスーパーでウィスキーを買って来てくれたそうです。
「良いお客さんたちに囲まれて、すっごく嬉しかった。うちはね、ピアスだって、メガネだって、腕時計だって、なあんだって、落ちていれば、何でも番台に届けられるの。お風呂商売はね、いろんな人と出会って、お互いに支えあい。ここの銭湯は、それで成り立ってきたのよ」
出てくる話、出てくる話、良い話すぎて泣きそうです!!!
ドリンク用のレトロな冷蔵庫もありますヨ。
取材ではなく、以前、プライベートで訪れた時にも、「今日で賞味期限が切れちゃうから、飲んでいってね」とコーヒー牛乳をいただいたことも。入湯料400円なのに恐縮です、と思いながら、ありがたくグビグビと飲み干しました。
ハル子さん、私は心までポカポカよ♨
お手伝いをしている息子さんによれば、この銭湯は、店主とハル子さんの年齢を考えると、施設の老朽もあって、あと8年できるかどうか……だそうです。
みなさん、どうぞハル子さんに会いに出かけてみてくださいね。
フリーライター。1984年生まれ。神奈川県の大磯町住まい。幼い頃から、毎日銭湯に通う母親に連れられ、しょっちゅう銭湯へ。銭湯は特別なものではなく、日常生活の一部。入浴はもちろん、サウナをこよなく愛するサウナー。何度も同じ銭湯に通う派。