「自由が丘のみどり湯さんには、ギャラリーがあるらしい。」
どこで聞いたのか見たのか、そんな噂を耳にしたのは夏でした。
みどり湯さん、行ったことあるけどギャラリーなんてあったかなあ?
記憶の中のみどり湯さんは、緑道近くの静かな住宅街。ランナー利用の人はけっこういたけど、ごくごく普通の銭湯だったような…
調べてみると、茶室を備えたギャラリーを最近オープンしたとのこと。これはぜひお話を聞いてみたいと連絡を取ったのでした。
約束した日は、あいにくの雨。
銭湯の隣のギャラリーをたずねると、迎えてくれたのは若い女性のオーナー・智子さんでした。
キャッチフレーズは 「美容・健康・リラックス」!女性オーナーの感性が光る「みどり湯」さん
自由が丘駅南口から、緑道を歩いて約7分。街の喧騒からやや離れた静かな住宅街に 「みどり湯」 さんはあります。
「昔ながら」の外観ではないですが、ビル型でもない。シンプルな「街のお風呂屋さん」というたたずまい。
大型の洗濯機や乾燥機が並ぶコインランドリーは清潔で、街の人に日常的に利用されているのだろうなあ、と感じさせてくれます。
ロビーは落ち着いたこげ茶の家具で統一されています。ちいさなカウンターがあり、女性やおひとりさまでも気兼ねなくくつろげる雰囲気。
化粧水やクリーム、綿棒などのアメニティがさりげなく置いてあるのも嬉しい心遣い。
入口はフロント式です。使い切りサイズのアメニティグッズも充実。貸タオルもありますので、手ぶらで来ても安心です。
フロント下には、なにやら可愛いコーナーが…!
ミニチュアの銭湯グッズや模型がずらり。ちいさなケロリン桶もある!建て替える前の「みどり湯」さんの写真も飾られていますね。
このコーナーは、けっこう注目して見てくれるお客さんも多いんですよ、と智子さん。
脱衣所はこちら。
女湯の方は、オカマドライヤーも健在です!
どちらの脱衣所にも縦長のロッカーがあるので、スーツや荷物の多いお客様にも嬉しいところ。
浴室もシンプルで、ゆったりとした大きな湯船。お湯は熱すぎずぬるすぎず、子どもから大人まで楽しめそう。
水風呂も大きめで嬉しい。有料(200円)サウナもあります。
清潔で、使いやすい心配り。
以前訪れたときは確か休日でしたが、ランナーの方や子供連れの家族で賑わっていました。
長年地元の方に愛されている、安定した実力を感じる銭湯。そんな印象どおりの「みどり湯」さんです。
銭湯のお隣、ギャラリー yururi に潜入!
「みどり湯」さんのお隣、ギャラリー「yururi」に移動して、お話を伺いました。
智子さんのひいおじいさんは、東京で7軒の銭湯を経営されていたそう。「みどり湯」はその中で今も唯一残っている銭湯です。
実際の運営は人に貸していたので、智子さんにとっては 「うちの銭湯」 という意識はあまりなかったのだとか。
ところが8年前にその方がやめることになり、美容関係の仕事をしていた智子さんに話が回ってきます。
ひいおじいさんが始めた銭湯とはいえ、銭湯の仕事になじみがあったわけでもなく、自身もさほど銭湯好きでもない。
それでも不思議と迷いなく、「やります!」 と跡を継ぐことになったのだそうです。
それには、「もっと美容と健康のために銭湯が貢献できるのではないか」という思いと、「自由が丘という場所でなにか面白いことをしたい」という気持ちがあったと言います。
現在は智子さんとご主人、ご主人の弟さん、女性社員さんの4人と、アルバイトの方々で切り盛りされています。
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2年ほど前から構想をあたためていたギャラリーは2016年6月にオープンしました。
お風呂あがりにアートが見られたらいいな、という気持ちが原点。
お風呂に来た人がギャラリーに寄ってアートを見る。ギャラリーに来た人が銭湯にも寄ってくれる。
そんなふうに、どちらのお客様にもきっかけになるようなことができたら、と話してくれました。
ギャラリーでは美大生たちの展示も何度か行われています。レンタルギャラリーとして場所の貸し出しもしていますので、ご興味のある方はぜひお問合せを。
(自由が丘という立地では、なかなかお手頃な価格ですよ!)
そして、ギャラリーの2階には茶室も。
きちんと水屋もあり、本格的です!
こちらの茶室では定期的に茶の湯体験を開催しています。
茶室を作ったことで、「銭湯×茶室×ギャラリー」という面白い組み合わせが生まれました。
銭湯やお茶を切り口に、日本文化を発信するような展示も積極的にしていきたいとのこと。
次回の展示は
昭和の銭湯写真展
~銭湯の歴史と自由が丘の街並みの移り変わりを垣間見れる写真展~
2016年10月10日(月)~17日(月)※13日(木)定休日
14:00 ~ 20:00 (最終日17日は13:00 ~ 17:00)
こちらも貴重な昔の写真などが見られそうで楽しみですね。
お風呂あがりのお茶会とかも、あったら参加してみたい…!
まだまだはじまったばかりですが、おもしろいカルチャーがうまれそうな予感です。
ギャラリーに関する情報は、ホームページで詳しく見ることができます。
お茶会に参加してみたい、今どんな展示をやっているか知りたい、展示場所を探している人はぜひ、チェックしてみてくださいね。
【10月17日】中島盛夫絵師によるペンキ絵復活!ライブペインティングを開催!
そして銭湯の方でも、アートなイベントが開催予定です。
先ほどご紹介した「みどり湯」さんの浴室、現在はシート状の富士山写真が貼られていますが……
なんとここに、ペンキ絵が復活します!!
日本を代表するペンキ絵師のひとり、中島盛夫さんをお呼びしてのライブペインティングが開催決定!
ペンキ絵のライブペインティングはそれだけで迫力満点ですが、「実際に浴室の壁に描かれる」ところを見られるのはさらに貴重。
ふだん「みどり湯」さんをご利用の方も、そうでない方も、必見のイベントとなりそうです。
【日時】
10月17日(月) 13:00 ~ 17:00
入場無料&時間内ご自由にご覧ください
中島さんのオリジナルグッズもフロントにて販売いたします。
このイベントから、「みどり湯」さんは「ペンキ絵がある銭湯」になるわけです。
ペンキ絵のある銭湯がどんどん減っているなかで、これはなかなかすごいことなのでは…と思います。
イベント前、イベント後で足を運んで、違いを楽しんでみるのも良いかもしれませんね。
銭湯×アート。自由が丘の地で、変化し続けるみどり湯さんに注目!
銭湯の経営。そして茶室のあるギャラリー。
若い女性が銭湯を引き継いで、新しいことを始めているというだけでもワクワクします。
どこの銭湯にも、続いてきた歴史やずっと通っている常連さんがいて、引き継ぐ人がゼロから設計できるわけではありません。
引き継いだ若手の人達は、今までの伝統は守りつつ、時代に合った快適さや新しい試みを少しずつ取り入れて、アップデートしようと奮闘しています。
今回お話を伺って、みどり湯さんも独自の視点で新しい道を切り開いていこうとしているのが感じられました。
定期的に通って、今後の展開に注目したい銭湯がひとつふえました。
お散歩がてらギャラリーの展示をチェックして、お風呂で汗を流すのもよさそう。自由が丘のショッピングや散策コースに、ぜひ加えてみてくださいね。
それではみなさま、今宵もよいお湯を♨
(訪問日:2016年9月)
黒湯豊富な大田区に生まれ、銭湯の恩恵を受けてスクスク育ちました。
X大田区中心に、日常的に銭湯利用中。本業は植物やお花のアレコレ。