ノルウェーのジムにあるサウナ
日本ではほとんどの家にお風呂があるのに銭湯へ行くのと同じように、家庭にサウナがあっても外のサウナに入りに行く北欧の人たち。日本の銭湯と北欧のサウナは、おなじような立ち位置なのかもしれません。そこで、とある北欧のサウナ事情や、生活の中に溶け込んだ楽しみ方をご紹介していきます。
北欧の一国として数えられるノルウェー。その第4の都市スタバンゲルにあるローカルなジムのご紹介です。名前は「Gamlingen」(ガムリンゲン)。隣国フィンランドでサウナが生まれただけあって、ノルウェーでは多くのジムにサウナが併設されています。
このジムでは、受付の奥にカフェがあります。北欧らしいインテリアと温かみのある木材が印象的です。
施設の作りはシンプルで、大きく3つに分かれています。入ってすぐ右手に見えるプールと左手にあるサウナルーム。そして、正面奥にあるトレーニングルームです。
トレーニングルームの中はこんな感じ。何の変哲のないごく普通の内装ですね。スペースもそこまで広くはなく、器具も20種類前後と言ったところです。
ここのジムの利用者の目当ては、このトレーニングルームでなくて屋外にある温水プール。その様子がこちら。
大人用と子供用で分かれていて、大人用のプールは長さ25mで、水深2mです。かなり深いですね。平均身長180cm越えのノルウェー人でさえ足が届きません。
子供用のプールは楕円型で、子供が立って遊べるくらいの浅さです。スタッフの方に伺ったところ、水温は28℃前後で設定されているようです。
それでは、サウナのご紹介を
今回施設内の撮影許可が下りたものの、サウナの中の撮影はできませでした。ジムのHPやSNSを見てみたのですが、サウナの写真は見つからなかったので、あまり表に出さないのかもしれません。なので、直筆のイラストとともに説明しますね。
まず、このジムにはサウナが3種類あります。1つは男性専用サウナ、それから女性専用サウナ、そして男女兼用サウナ。スタッフの方曰く、ノルウェーでも男女兼用のサウナは珍しいようです。
男女兼用のサウナ室はこんな感じ。ドアを開けるとすぐ右にサウナストーブが設置されています。座席は2段になっていて、マックスで15人くらいが入れる広さです。とは言っても、床にそのまま座る人もいたり各々が好きなようにサウナを楽しんでいます。
サウナは85℃と低めに設定されています。が、サウナストーンの上にセルフでロウリュできるので、温度をあげることができます。
日本の銭湯のように水風呂はなく、サウナ室の外にあるシャワーを浴びる人が多いです。その後、そのままプールに飛び込む人もいます。プールサイドで外気浴を楽しんでいる人も見かけることもあります。
サウナとの出会い
これは僕が北極圏に旅行に行った時の写真です。フィンランドなどでは、水風呂の代わりに湖に飛び込むのですが、この写真は湖ではなく北極海に飛び込んでいる写真です。
僕のサウナとの出会いはスウェーデン。小さい頃から温泉にはよく行っていたものの、やっぱり暑くて息苦しいサウナは好きにはなれませんでした。そんなサウナのイメージを一変させてくれたのが、スウェーデンでの経験でした。
学部時代にスウェーデンへ1年ほど留学していたのですが、当時住んでいた寮にサウナ室がありました。「さすが北欧」と言わんばかりに、サウナが生活の一部になっていることに驚いたのを覚えています。卓球ルームもあったので、同じ寮に住んでいた友達と卓球をして汗をかき、サウナでまた汗をかくのがいつしか習慣化しました。
何でもない世間話をしたり、将来について語り合ったりしたことを覚えています。サウナの中だからこそできた会話だったのかもしれませんね。サウナを出た後は、キンキンに冷えた外の空気を浴びて、ビールを飲むのが何にも替えがたい至福のひとときでした。
寮にあったサウナに定期的に入るようになり、気づけばサウナの虜になった僕は帰国後も月に一度は必ず地元の銭湯に行くようになりました。今はノルウェーに住んでいますが、月に一度は必ずサウナに入るようにしています。
サウナは大人の社交場
さて、話は先程のノルウェーのサウナに戻ります。本場フィンランドのサウナを体験したことはないものの、北欧の人はサウナを社交場として楽しんでいるような気がします。
初めてこのサウナに入った時、見るからに他人同士の人たちが楽しそうにお喋りをしている様子を目にしました。僕には理解できないノルウェー語があちこちで飛び交っています。僕の経験上、日本の銭湯でこんな光景は見たことがありません。
何度か行くようになったある日のこと。いつものようにサウナを楽しんでいると、隣に座ってきたおじさんが話しかけてきてくれました。最初はノルウェー語で話しかけられたのですが、もちろん何を言っているのかわからなくて英語で返答。そのおじさんからすると僕はタイ人に見えたみたい。すごく気さくなおじさんで、よくよく話を聞いていると小学校に勤めているようです。サウナで知らない人と話したことがなかったのですが、嬉しくなってつい色々とノルウェーのことを聞いてみました。
「ノルウェーのスーパーって外国のブランドの商品全然置いてないですよね。たまに見つけても高い関税がかけられていて高いですよね。」
「ノルウェーの石油産業ってこれからどうなるんですか?」
「ノルウェーの教育ってどんなところを改善すべきだと思いますか?」
思い思いに質問攻め。話が弾みに弾んで、途中から外に出たいくらい暑かったけど、サウナでこんな出会いがあったのは素直に嬉しかったです。
「これだ!」
きっとノルウェーの人たちにとって、サウナは社交場として機能してるんだなと思いました。これこそ本当に意味での「裸の付き合い」なのかもしれません。北欧流のサウナの楽しみ方を生で体感できた貴重な経験でした。サウナに行く楽しみがまた1つ増えました。
さいごに
ノルウェーのジムとそこでのサウナの楽しみ方についてご紹介しました。
日本では一般的にサウナに入る理由として、健康のためであったり、サウナ後の爽快感が好きだから、という点があると思います。僕が日本で行っていた銭湯のサウナではテレビが観れました。友人、知人同士の場合は別として、一人で来た場合は誰とも話すことなく、暑くなったら水風呂に入り、またサウナに入る。これが日本のサウナの入り方のように思います。
一方でノルウェーはと言うと、水風呂もなければテレビもありません(フィンランドなんかでは、サウナの近くにある湖にそのまま飛び込むなんてこともあります)。あくまでも「社交の場」としての意味合いが強いように思います。
北欧ならではの厳しい気候が人との繋がりを強くしているのかもしれませんね。サウナの楽しみ方は人それぞれですが、同じサウナであっても国によって楽しみ方が異なるのは面白いですね。
北欧まで旅行の際は、ぜひサウナに入ってみてください。
日本にある、温泉や銭湯でもこんな社交場になればいいなぁと思います。
スウェーデンへの留学を機に、すっかりサウナの虜に。
WEBSITE月一サウナを始めて早3年。
現在はノルウェーにて社会保障を中心に研究している大学院生です。