2016年8月27日、大田区のギャラリーhasu no hana にて行われた丸山清人さんの銭湯ペンキ絵ライブペインティング。
ペンキ絵にはそれほど思い入れはなかった私ですが、職人技の鮮やかな筆さばきにぐいぐ引き込まれた3時間でした。
ライブにはかなわないけれど、当日の様子を少しレポートいたします。
職人技の筆運び!あっという間の富士山絵。
おもむろに、さらさらと下書きからスタート。途中で一服休憩など入れながらのライブペインティングは、約3時間の予定です。
最初はベニヤ板に白いチョークで下書きをします。
実際の銭湯ペンキ絵は、前の絵を消さずに直接その上に描いていきます。前のやつよりいい絵にしてやろう、と対抗心がわくのだとか。
構図をざっと下書きしたら、まずは空の水色から。
一番面積の広い空は、ローラーで。水色のペンキを缶から直接ローラーにつけ、大胆に塗っていきます。
空を塗り終わったら、富士山。ここからは刷毛に持ち替えて塗っています。足元に見えるのはペンキ缶とパレット。
ここでペンキを混ぜ合わせ、色を作りながら塗っていきます。青に白を混ぜながら、裾野のグラデーションができていきます。
ちょっとペンキが垂れても気にしない。海との境目にはマスキングテープを貼って、くっきり塗り分けをします。
白いペンキをかすらせて、雲に。
山頂に積もった雪の陰影が描き込まれると、一気に立体感が出て驚き!
空と富士山は、ほぼここまでで完成。開始から30分くらいでしょうか。早い!
思ったより早かったので、見逃してしまった方も多かったようですよ。
たった5色のペンキから生み出される繊細な色たち。
さあ、手前の風景に取りかかります。大胆にぐぐっと線をひいていきます。
このあたりから、青と白以外の色がつくられはじめます。岩肌の茶色、森の緑色…
それらはすべて、たった4色+白のペンキを混ぜ合わせることでつくられているのです。
黄色・赤・青・黒のペンキを混ぜているところ。
ペンキ缶の手前のパレットにペンキを出して混ぜ、色を作っては塗る。
少しずつ調整しながら、色を変えていきます。まさに一期一会の色です。
左側にある容器は水が入った容器。
違う色をつくるときは刷毛を洗い、パレットがいっぱいになったら水をつけたタオルで拭き取って、また新しい色を作る。その繰り返し。
小さなこのパレットと、限られた数本の刷毛で、手元だけで色をどんどん作って塗っていきます。すごい……
手前の風景も終盤。
丁寧に描いていた砂浜の船の上に、突然黒い線が引かれ、会場がざわめきました…!
緑のペンキがとんとんと置かれ、あっというまに松林が出現。
終了後の質問コーナーで、「描き込むのを切り上げるタイミングは難しくないですか?」 との質問に、「松を描いたら終わりなんだよ」 と答えていらっしゃいました。
なるほど、松林は完成への納得の証なんですね。
最後に細い筆を取り出し、真っ白なペンキでサインを。
さらさらっと描くのかと思いきや、ゆっくりと筆をはこび、白いペンキを置くようにのせていました。
特徴的な流れるような丸山さんのサイン、銭湯で見たことある方も多いのではないでしょうか。
実際に描いているところを見られて感動!
そして完成したペンキ絵が、こちらです!
うんうん、銭湯で見慣れた富士山。
でも、まっさらだったベニヤ板から描きあがるまでを見てくると、この絵のすごさがわかります。
たった5色のペンキで描いているなんて、信じられない鮮やかさです。
ライブペインティングの魅力。
お客さんの熱気と、充満するペンキの匂い。目の前でどんどん出来上がっていく絵。
大胆に塗りつぶされる部分と、繊細に描き足される陰影や波間のギャップ。手元で作られていく、新しい色、色。
丸山さんの迷いのない筆はこびに、みんなが釘付けになった3時間でした。
もしペンキ絵ライブペインティングを見る機会があったら、是非できるだけ近くの席で!手元を見ながら!臨場感を味わってください。
描き方には独自のやり方もあると思われます。他の絵師さんのライブペインティングも見てみたくなりました。
丸山清人オリジナル手ぬぐいをゲット!
今回のイベントでもうひとつ楽しみだったのは、物販です。
オリジナル手ぬぐいやポストカードが制作され、会場で販売されていました。
ありそうでなかった、丸山さんのペンキ絵手ぬぐい。ええ、もちろん迷わずゲットです!
発色のよい青!雄大な富士山。なんとも美しい手ぬぐいです。
手ぬぐいを包んでいた包み紙はフライヤーになっていて、「ほぼ日刊イトイ新聞」で連載された丸山さんのインタビュー が掲載されています。
下の方には、今回のイベントに協賛した企業や個人の名前が入っています。かつて銭湯ペンキ絵の下に広告があったことを思い起こさせてくれるよう。
そのほかに、大田区のペンキ絵がある銭湯情報なども掲載されており、なかなか読み応えのある包み紙になっていました。
こちらの手ぬぐいはまだ購入できるそうなので、気になる方はぜひ問い合わせを!
→ 丸山清人オリジナル手ぬぐい
ペンキ絵のある銭湯の記憶を。
新しくリニューアルされた銭湯では、ペンキ絵を見ることは少ないです。富士山の絵があっても、ペンキではなくタイル絵だったり。
銭湯のあり方や経営方法は、時代とともに変わっていくものです。銭湯ペンキ絵が減っていくのは仕方ないことかもしれません。
でも、大正から昭和の時代、お風呂屋さんの壁には広告とともにペンキ絵があったこと。
専門の職人が、毎年工夫をこらして描き換えていたこと。
今も残る 「銭湯には富士山の絵」 のイメージは、ペンキ絵から始まったこと。
そんなペンキ絵の記憶は、どんな形であれ、受け継がれ語り継がれていくといいなと思います。
ライブペインティングはそのきっかけのひとつになるのではないでしょうか。
ペンキ絵が描きあがる瞬間をライブで見ると、銭湯でのペンキ絵の見え方も変わるはず。
ということで、芸術の秋にむけて、こちらでも丸山さんのライブペインティングが予定されています。
9月22日(木)~10月2日(日)
丸山清人個展 @国立ギャラリービブリオ(公式ページ)
9月25日(日)ライブペインティングあり
個展では丸山さんの作品も購入できます。
在廊日もあるようなので、お話してみたい!という方もぜひ、訪ねてみてはいかがでしょうか。
黒湯豊富な大田区に生まれ、銭湯の恩恵を受けてスクスク育ちました。
X大田区中心に、日常的に銭湯利用中。本業は植物やお花のアレコレ。