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デザインで銭湯を考える。『SENTO FOREVER』による展示会レポート「YOU &湯〜あなたと銭湯〜」

〒152-0034 東京都目黒区緑が丘2-7-14

2018年2月25日(日)〜28日(水)自由が丘『みどり湯』併設ギャラリーyururiにて、私たちSENTO FOREVERによる展示会「YOU &湯〜あなたと銭湯〜」を開催しました。
4日間で200名ほどのご来場をいただき、無事に終えることができました。

SENTO FOREVERとは、2017年10月10日に発足した、昭和女子大学環境デザイン学科4名によるデザインで銭湯を考えるプロジェクトチームです。


(プロジェクトはじめたきっかけについてはこちらをご参照ください)

今回はプロジェクト活動の第1弾「YOU &湯~あなたと銭湯~」の展示の様子をお伝えします!

 


展示会の目的は、常連さんたちとの会話


もともと、銭湯に関わりがあったわけではない私たちが、これから銭湯で何ができるかと考えた時、まずは私たち自身が銭湯について知ることが大切だと考えました。

自分たちで銭湯に行ったり、銭湯のイベントに行くだけではなく、銭湯と関わる方、銭湯に行く方たちと直接会ってリアルなお話を聞きたい!と思い、展示会テーマを「YOU &湯〜あなたと銭湯〜」とし、お越しくださった皆さまに銭湯に行く理由・銭湯への想い・これから銭湯がどうなって欲しいかなどをお聞きしました。

ギャラリーyururiが持つ不思議な力なのか、会場ではお風呂上がりの皆さんにゆるりとお過ごし頂き、色々なお話を伺うことができました。

 


“YOU &湯 ~あなたと銭湯~”と“I &湯 ~わたしと銭湯~”


会場は大きく2つのセクションに分け、YOU &湯=銭湯に関わる人へのインタビューと、I &湯=主催者である私たちの個人作品という構成にしました。

まず、YOU&湯 ~あなたと銭湯~ では、銭湯に関わる6名の方にあなたにとって銭湯とは?”という質問を軸に取材インタビューを行い、パネルと動画で展示しました。
銭湯に抱いている想いや、素敵なエピソード、未来の銭湯像……十人十色の銭湯’sストーリーでした。

ご来場の皆さんにとっての銭湯という場所。考えるきっかけになれたでしょうか?

単に“銭湯が好き”ということだけにとどまらない現場の方の声や、興味深い活動や考えからは、銭湯の新しい可能性を感じ、これからの銭湯のあり方を考えることができました。

一方、I &湯 ~わたしと銭湯~ では、プロダクトデザイン、建築・インテリアデザイン、デザインプロデュースをそれぞれ専攻している私たち4人各々の切り口で銭湯との関わりを考えました。会場では、作品や企画を展示しました。

 

ゆとひと(イラスト) by Ayako Arimoto

番台からよく見る風景。右の靴箱の鍵を探す紳士は本当によく見かけます。

全体図。日に日に枚数が増えていきました。

Ayako Arimoto「個人の作品では4人の中でも個性が出るようにイラストを描きました。「銭湯と人」をテーマに生活の中で銭湯に来る人々の瞬間や仕草を切り取りました。

展示のDMのイラストも担当しました。YOU&湯という展示会のテーマをもとに「あなたと銭湯・お風呂を考える」と解釈し、鏡と向き合った構図にしました。テーマカラーは清潔感や浴場をイメージした淡い水色にしました。淡い色使いにしたのは、寒色がメインのため全体的に淡くすることによって温度を感じさせるようにしたかったからです。

お風呂屋さんである銭湯は、公共のものでありながら生活の一部として私的な面も持ち合わせています。そんな公共施設として唯一無二な面が面白いなと思い、このテーマで描きました。

実はこのプロジェクトをきっかけに、ギャラリーと併設する『みどり湯』の番台のアルバイトも始めました。銭湯の利用客からの目線はもちろん番台をしているので銭湯の内側からの目線でも描きました。銭湯を利用する中での仕草やポーズを日本ならではの無意識のカルチャーとしてイラストで表現しました。銭湯でのシーンを思い浮かべながら楽しくご覧頂けたでしょうか。
牛乳屋さんのおじいさんは、会場で上映していたインタビュー動画の中にも登場しました。」

 

おいでよ!どうぶつの湯(建築模型) by Akari Fujisawa

どうぶつの湯外観。宮造りの銭湯を意識しました。

内観のポイントは銭湯絵!ゲーム内の富士山風のイラストに。

Akari Fujisawa「私が昔から大好きなゲームでどうぶつとスローライフを営むシュミレーションゲームがあります。昨年、アプリとしてリリースされて1週間で1500万ダウンロードを記録するような人気ぶりです。もし、その世界観に銭湯があったら、子供たちにももっと銭湯が身近な存在になるのでは?と思い作品を考えました。

ゲームでは現実と同じ時間が流れるどうぶつたちが暮らす世界で、気ままなキャンプ場作りが楽しめるスマホの中のポケットキャンプです。そこで思いがけずキャンプ場の管理人になったプレイヤーはテントや家具を自由にレイアウトして、どうぶつたちの集まる賑やかなキャンプ場を作ることになります。キャンプ場の他に南国の島やビーチ、森などいくつかのレジャースポットがあり、キャンピングカーで周りながらサカナを釣ったり、フルーツを集めたりします。

そのレジャースポットの中に銭湯があったらとイメージを膨らませ、元のゲームの可愛らしい雰囲気を残しつつも、建築学生ならではの材料や手法を使って模型を作り、どうぶつたちが銭湯でのんびりしているところを表現しました。こうして形にしてみると皆さんもイメージがしやすくなったのではないでしょうか?

展示では写真を撮ったり、動物を動かしたり楽しんで頂けました。これを機に、銭湯の建物のつくりにも興味を持って頂けたら幸いです。

 

湯みくじ(おみくじ) by Sakura Tsukamoto

番台で下足箱の鍵の番号のおみくじが渡されます。

おみくじを引いたみなさんの銭湯の好きなところを書いていただきました。

Sakura Tsukamoto銭湯のおみくじをつくりました。これは、銭湯の入り口で選んだ下足札を番台で見せると、その番号のおみくじが貰えるというもので、靴箱を選ぶこと=おみくじを引くことになります。

銭湯の歴史を探ると、仏教が日本に伝わった時代に寺院が身を清める沐浴を開いたものが銭湯に発展し、日本のお風呂文化のルーツになっていることがわかります。銭湯には、神社仏閣に使われる唐破風の屋根や宮造りなど、それに近い文脈の文化も見受けられます。そこで、お風呂屋さんは普通のお店とは少し違った歴史ある有り難い場所だなと思い、おみくじの企画を考えました。

今回4日間限定で、『みどり湯』さんで「湯みくじ」を開催しました。お風呂に入った方に湯みくじを楽しんで頂き、「銭湯の好きなところは?」アンケートに答えてもらいながらお話させて頂きました。書いてもらったアンケートは湯みくじ台に展示し、みなさんの銭湯への想いがあふれる場所になりました。

小さなお子さんからお年寄りの方まで、それぞれの銭湯との関わりや想いをお話してくださり、様々なエピソードなどを聞くことができました。」

 

1010SOAP(せっけん) by Natsumi Minato

パッケージは10ピースが際立って透けるよう工夫したスリーブにしました。

型を制作しているので、同じ形で、カラーや香りのバリュエーションが量産できます。

Natsumi Minato使いたいときに必要な分だけ、折って使う固形せっけんをデザインしました。
手のひらサイズの固形せっけんは使い切れずに余ってしまう……そんな視点から生まれたポータブルせっけんです。

デザインのきっかけは愛媛県道後温泉に行ったときの浴室でみた光景でした。道後温泉は観光客が多く、お風呂グッズを持ってきていない人がフロントで固形せっけんを購入する光景が多く見受けられました。しかし、浴室には置き去りにされている大きなせっけんが何個もありました。

固形石けんより、液体石けんが主流になっているなか、分ける”ことができたら、楽しんで固形石けんを使うことができるのでは、と新たな価値を考えてみました。

制作は3Dモデリングで設計し、量産できるように型をつくりました。
銭湯の入浴回数券と合わせて1010SOAPで銭湯巡りをするもよし、お友だちやご家族と分け合うもよし。パキッと割るという行為が新たなコミュニケーションになってくれたらいいなと思います。10ピースをどんな風に使うかはあなた次第です。

会期中に会場で1010SOAPを販売させていただいたところ、おかげさまで完売してしまいました。嬉しいお言葉もたくさん頂いたので、再販売も検討中です。」

 


展示会を終えて


レセプションパーティーでは、展示会テーマに合わせ
「○○&湯」に自分の名前を書ける紙コップを作りました。

昨年の10月にプロジェクトをスタートしてから今回の展示会まで、目の回るような日々でした。自分たちで展示をやる!と決めたものの、学校の課題や就職活動と同時進行しながら、深夜の電話会議とスキマ時間で制作を行い、どうなることやらと展示が迫るにつれ、不安は膨らむばかり……。

でも不安以上に、快く協力し応援してくださる人たちの優しさと、銭湯という素晴らしい存在のおかげで、とっても楽しかったんです。
お風呂好きな人はあたたかい人ばかりで、4日間とても幸せな時間を過ごせました。お越しくださいました皆さま、本当にありがとうございました。

さらに銭湯が大好きになったSENTO FOREVERは、今回の展示会で学び得たことを次へ繋げていきたいと思っています。

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